こんにちは。
さっぽろ矯正歯科クリニック、歯科衛生士の小坂です。
今回は、矯正治療において使用される装置の一つであるアンカースクリューについてお話したいと思います。
アンカースクリューとは?必要性や痛みについて
歯科矯正用アンカースクリューとは、チタン製の小さな医療用ネジのことです。
歯を引っ張る土台(固定源)にして、効率的に動かしていきます。
チタンは生体適合性に優れた金属で、骨折の接合や人工関節、人工歯根などに用いられ、金属アレルギーの心配もない安全な素材です。
アンカースクリューのサイズは、直径1.4mm、長さ6mm程度のとても小さなものとなっています。
アンカースクリューを使った矯正方法は、矯正治療の期間の短縮化や、歯の動かし方の可能性を広げる有効な方法として、1990年代後半に登場した新しい治療法です。
なぜアンカースクリューが必要なのか、痛くないのかなど、詳しく見ていきましょう。
歯科矯正用アンカースクリューはどうして必要なの?
アンカースクリューは矯正治療のために歯を抜歯し、そのスペースを可能な限り前歯をひっこめることに使いたいという場合などに使用されます。
従来の治療法では、ヘッドギア(頭にかぶる装置)を使用し、奥歯が前へ出てこないように留めておく必要がありました。
ヘッドギアはとても良い装置なのですが、就寝時に最低8時間以上装着しなければ効果が出づらく、成人の方はなかなか難しく、効果は患者さんの協力次第でした。
ヘッドギアと違って、アンカースクリューはネジから休みなく引っ張り続けるので、治療期間が短くなります。
また、従来の矯正治療では難しかった方向への歯の動きを可能とするため、症状によっては、非抜歯矯正の治療にも可能性の拡大が期待できます。
アンカースクリューって痛いの?
歯ぐきにネジを植えると聞くと痛そうな処置内容ですが、痛みの心配はありません。
理由は、骨には痛覚がないため。
始めに局所麻酔をします。
歯ぐきの表面だけに効けば十分なので、麻酔の量自体もかなり少量で、処置も3分程度で済みます。
処置を受けられた患者さんは「思ったより全然怖くなかった」「もう終わったんですか?」と痛みを感じなかったという方が多いので、安心して治療をお受けください。
矯正治療を終了すると、アンカースクリューはブラケットと一緒に外します。
歯ぐきの傷跡は綺麗に治癒するのでご安心ください。
アンカースクリューのメリット
アンカースクリューには、臼歯(きゅうし:奥歯のこと)の動きを抑えたり、臼歯部の固定装置を簡略化したり、困難な方向にも移動できたりするメリットがあります。
詳しく見ていきましょう。
臼歯の不要な動きを抑えることができる
出っ歯を治すために前歯を後方に下げたいとき、通常は前歯部と臼歯部を引っ張り合うことになります。
ですが、アンカースクリューから前歯部を引っ張れば臼歯はその場に留まることができるため、前歯の後方への移動量を増やし、出っ歯の改善につながります。
臼歯部の固定装置を簡略化できる
アンカースクリューが登場する以前は、臼歯が動かないように左右の臼歯を固定装置で連結したりヘッドギアを使用したりしていました。
ですが、アンカースクリューから前歯を引っ張ることができれば、固定装置やヘッドギアなどのお口の外から臼歯部に力を加える装置の使用を控えることができます。
困難な移動方向への対応ができる
大臼歯(だいきゅうし:奥歯のこと)を押し込んだり後方へ移動させることは、今までかなり難しいとされていました。
しかし歯科矯正用アンカースクリューを用いた装置であれば、そのような難しい歯の移動も行えることができる可能性があります。
症状によっては、従来なら外科手術が必要な状態でも、アンカースクリューを使って手術なしで矯正治療が可能になる場合もあります。
さっぽろ矯正歯科の大人の矯正治療の一覧もぜひご覧ください。
アンカースクリューのデメリットとその対応
アンカースクリューにはデメリットもあります。
トラブルがあった場合の対応方法についてもご紹介します。
脱落することがある
インプラントと異なりいずれ除去しなければならないため、骨との化学的な結合がされません。
そのため、習熟した術者であっても成功率は80〜90%といわれています。
また患者さんの骨の状態や口腔衛生状態によって成功率は左右されます。
脱落した場合は再埋入を行うことがある
脱落してしまった場合は、歯科矯正用アンカースクリューを再埋入することがあります。
脱落した部分の骨の穴は小さいので回復しますが、数カ月の時間がかかります。
そのため、再埋入時には違う部分への埋入となることがあります。
感染の原因となる場合がある
歯科矯正用アンカースクリューは骨に埋まっていますが、スクリューの頭はお口の中に飛び出しています。
しっかりとしたケアを行わないと、スクリュー部分から骨に至る感染を起こす可能性があります。
歯根を傷つけることがある
歯科矯正用アンカースクリューは歯の根と根の間に埋入されることが多いです。
そのため、埋入時に歯根を傷つけてしまう可能性があります。
当院では治療の最後にレントゲン写真を撮り、問題がないか確認しています。
アンカースクリューの注意点
とても有益な歯科矯正用アンカースクリューにも注意点があります。
お口の中が不潔なままだと、せっかく入れたアンカースクリュー周囲の歯ぐきが感染を起こし、グラグラしたり、外れることがあります。
タフトブラシやお渡しするうがい薬を使ってアンカースクリューの周囲を清潔に保っていただくことがとても大切です。
アンカースクリューを清潔に保つ方法は、衛生士より指導があります。
アンカースクリューは治療が終了する際に外しますが、1~2日で歯ぐきは塞がり、1か月もすると骨も再生します。
まとめ
●アンカースクリューはチタン製の小さな医療用ネジのことです。
歯ぐきにネジを打ち込むと聞くとびっくりしてしまうかもしれませんが、安全性や侵襲の大きさを考えると、過度に心配する必要はない治療法かと思います。
●アンカースクリューを使うことによって、臼歯の動きを抑えたり臼歯部の固定装置を簡略化できたり、歯を困難な方向に移動することが可能となります。
●デメリットとしては、脱落することがあること、感染の原因となる場合があること、歯根を傷つける可能性があることなどが挙げられます。
●アンカースクリューの周囲は清潔に保つよう注意しましょう。
矯正治療の相談をした時にアンカースクリューの提案を受ける場合もあります。
今回説明したデメリットや注意点も参考にしていただき、治療を検討する際の役に立てていただければ幸いです。
矯正治療に関して不安なことがあれば、さっぽろ矯正歯科クリニックへお気軽にご相談ください。
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